映画「ベアテの贈りもの」によせて
「小さく生んで、大きく育てよう」
…男女雇用機会均等法を成立させるとき、私はそう言って女性たちをなだめたのを思い出す。このとき、ベアテの労苦がしみじみ推し量られたものだった。
ベアテは日本の女性の幸せを心から願い、敗戦後の日本の憲法草案の作成に携わった。若くまっすぐなベアテの祈りは、その時かなり割愛されてしまったけれど、女性の人権と男女平等を謳った条文は、私たち女性の身の裡にひとつぶの種を胚胎させることとなった。ベアテの祈りは、私を含めた戦後日本の女性たちによって、小さくても確かな、いくつかの実を結んだと自負している。
かつてベアテの父、レオ・シロタは、世界的ピアニストでありながら、親身な指導で日本のピアニストたちを育ててくれた。ベアテの贈り物は、その父の薫陶をうけたものである。若い世代がさらに色とりどりの花を咲かせられるように、この映画を世に送り、ベアテの、そして私たちからの贈り物としたい。
【赤松良子・略歴】
1982年 婦人少年局長
1985年 男女雇用機会均等法を成立させる
1986年 駐ウルグァイ大使
1993年 文部大臣
1998年 びわ湖ホールオペラハウス館長
2008年 日本ユニセフ協会会長
【著書】
「均等法をつくる」勁草書房
「志は高く」有斐閣
その他多数